特別支援学校高等部の教育課程 知的障害とそれ以外の場合における違いは?高等学校との違いについても解説

学校の先生向け

こんにちは、ふくまるです!

この記事では、特別支援学校高等部の教育課程が、知的障害の場合とそれ以外の場合でどのようにちがうのかを解説しています。

また、知的障害のある生徒のための教育課程は通常の高等学校とどのようにちがうのか、複数の障害を併せ有する場合の教育課程についても詳しく解説をしています。

特別支援学校高等部の目的

はじめに、特別支援学校高等部には、次の2つの目的があります。

  • 高等学校に準ずる教育を施す(※「準ずる」とは原則同じという意味。)
  • 障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授ける(自立活動の実践)

準ずるとは原則同じという意味です。通常の高等学校で行われているような教育内容にくわえて、自立活動を実践するというのが特別支援学校の目的になります。

つまり、各学校は準ずる教育の部分(各教科等における指導の部分)と自立活動の部分、どちらも大切にしながら教育課程を編成する必要があるということです。

特別支援学校の教育課程について

つづいて、特別支援学校の教育課程についてです。

学校教育法施行規則では、以下のように示されています。

第百二十八条 特別支援学校の高等部の教育課程は、別表第三及び別表第五に定める各教科に属する科目、総合的な探究の時間、特別活動並びに自立活動によつて編成するものとする。

 前項の規定にかかわらず、知的障害者である生徒を教育する場合は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、職業、家庭、外国語、情報、家政、農業、工業、流通・サービス及び福祉の各教科、第百二十九条に規定する特別支援学校高等部学習指導要領で定めるこれら以外の教科及び特別の教科である道徳、総合的な探究の時間、特別活動並びに自立活動によつて教育課程を編成するものとする。

学校教育法施行規則第128条より

小学部、中学部については、第126条及び第127条に示されていますので、そちらをご覧ください。

 別表第三及び別表第五とは

別表第三:通常の高等学校の教科・科目

別表第五:視覚障害及び聴覚障害の特別支援学校の教科・科目

学校教育法施行規則第128条の第2項のとおり、知的障害の場合のみが別で示されています

つまり、大きく分けると特別支援学校高等部には教育課程が2種類あるということです。

  • 知的障害のある生徒のための教育課程
  • 障害(知的障害以外)のある生徒のための教育課程

この記事では、障害(知的障害以外)を、特別支援学校の対象となる障害にあわせて、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱の4つとしています。

では、この2つの教育課程には具体的にどのようなちがいがあるのでしょうか。

ここからは、上記の2つの教育課程について、それぞれのちがいや通常の高等学校との比較もあわせて詳しくみていきましょう。

知的障害のある生徒のための教育課程について

通常の高等学校との教科等のちがい

まず、通常の高等学校と特別支援学校高等部(知的障害)の各教科等一覧です。

高等学校特別支援学校高等部(知的障害)
各学科に共通する各教科国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、外国語、家庭、情報、理数、総合的な探究の時間、特別活動国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、職業、家庭、外国語、情報、特別の教科 道徳、総合的な探究の時間、特別活動、自立活動
主として専門学科において開設される各教科農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉、理数、体育、音楽、美術、英語家政、農業、工業、流通・サービス、福祉
通常の高等学校と特別支援学校高等部の教科等の違い

同じような教科もならんでいますが、すこしちがっている部分もありますね。

似ているようにもみえますが、枠組みそのものが異なっていることと特別支援学校高等部には自立活動があることが確認できます。

職業に特化した学科やコースを置いている高等部では、園芸、木工、窯業、清掃などといった働くために必要な力を身に付ける専門的な授業が多く設定されています。

また、学校で独自の授業名を設定することが可能ですので、上記の表に載っている教科名とはちがう名前の授業をしているケースも多いです。各学校の該当する授業のシラバスをみて確認をしてみましょう。

高等学校と高等部(知的障害)の教科等のちがい

  • 枠組みそのものが異なる
  • 自立活動の有無

単位認定について

単位習得の認定はありません

たとえば、1年間「国語」の授業を受けても、「国語」という単位が取れるわけではありません。通常の高等学校の教科とは枠組みそのものが異なっているため、高等学校の単位としては認められません。この点が、知的障害の生徒のための教育課程と通常の高等学校の教育課程の大きなちがいの1つといえるのではないでしょうか。他の高等学校に転学や編入学をする際には、履修単位や習得単位として扱われることが基本的に無いという点に注意が必要となります。

続けて、高等学校卒業に必要な必履修教科・科目がありません。(必履修科目の例:「現代の国語」「地理総合」「数学Ⅰ」など ※高等学校学習指導要領(平成30年告示))

通常の高等学校は卒業をするために、最低74単位が必要であると文部科学省が定めていますが、特別支援学校高等部にはそれがありません。代わりに、各学年1,050単位時間(1単位時間は50分)を標準とすることが学習指導要領に示されています。

単位認定について

  • 高等部(知的障害)には単位習得の認定がない
  • 高等学校などに転学・編入学するときには注意
  • 卒業に必要な単位数がない代わりに、年間の総授業時数は1,050単位時間を標準としている

評定について

単位認定がないため通常の高等学校のような、5段階による評定が出ません

大学進学に向けて総合型選抜や学校推薦型選抜(学校の推薦により進学をするのは、ごく稀なケースであると思いますが。)を受験する場合は、評定平均が無いということに注意しなければなりません。

学習評価は、個別の指導計画に基づいて、生徒一人ひとりに対して個別の目標を設定し、主に文章表記で評価をします。多くの場合、個人内評価がおこなわれます。

評定について

  • 5段階による評定が出ない
  • 学習評価については、個別の指導計画に基づいて、生徒一人ひとりに対して個別に目標設定をして評価をする

障害(知的障害以外)のある生徒のための教育課程

つづいて、「障害(知的障害以外)のある生徒のための教育課程」についてです。

通常の高等学校との教科等のちがい

障害(知的障害以外)のある生徒のための教育課程は、別表第三及び別表第五に定める各教科に属する科目、総合的な探究の時間、特別活動、自立活動で編成されています。

別表第三とは通常の高等学校の教科・科目別表第五とは視覚障害及び聴覚障害の特別支援学校の教科・科目のことでした。

障害(知的障害以外)の場合、教科・科目の追加がありますが、枠組みそのものは高等学校と同じです。

つまり、通常の高等学校との教科等のちがいは、視覚障害及び聴覚障害の特別支援学校の教科・科目が加わってる点と、自立活動がある点ということになります。

繰り返しになりますが、知的障害の場合とはちがい、教科・科目に追加はあるものの、高等学校と枠組みそのものは同じであるという点がポイントになります。

高等学校と高等部(知的障害以外)の教科等のちがい

  • 視覚障害及び聴覚障害の特別支援学校の教科・科目が追加されている(ただし、枠組みそのものは高等学校と同じ
  • 自立活動の有無

また、通常の高等学校の各教科等と自立活動のみで編成された教育課程(高等学校の学習指導要領に準じた教育を行う教育課程)のことを、「準ずる教育課程」と呼ぶことがあります。

単位認定など

知的障害の場合とはちがい、通常の高等学校と枠組みそのものは同じなので、単位習得の認定や卒業に必要な単位数があります。なので、知的障害の場合よりも高等学校に近い形であるといえるのではないでしょうか。

また、普通科においては、学校設定科目及び学校設定教科に関する科目に係る単位を20単位まで、卒業に必要な単位数に含めることができます。

知的障害を併せ有する場合

しかし、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)の生徒の中には、知的障害を併せ有する生徒もいます。

知的障害以外の特別支援学校であっても、そのような生徒に対しては知的障害のある生徒のための教育課程を編成し、それぞれの生徒に合った適切な教育をおこなうことができます

具体的には、同じ学校内に知的障害のない生徒のための教育課程知的障害を併せ有する生徒のための教育課程をそれぞれ編成することができます。肢体不自由特別支援学校の一例を下記に示しています。

肢体不自由特別支援学校の教育課程編成の一例

  • 課程A:準ずる教育課程
    • 知的障害を伴わない子どもが主な対象
    • 高等学校の教科等(高等学校の学習指導要領に準じた教育)と自立活動で教育課程を編成
  • 課程B:主に知的障害のある生徒のための教育課程
    • 肢体不自由に加え、中軽度の知的障害を伴う子どもが主な対象
    • 特別支援学校高等部(知的障害)の教科等と自立活動で教育課程を編成
  • 課程C:主に自立活動を中心とした教育課程
    • 肢体不自由に加え、重度の知的障害を伴う子どもが主な対象
    • 特別支援学校高等部(知的障害)の教科等と自立活動で教育課程を編成

特別支援学校高等部を卒業して得られる資格

また、特別支援学校高等部を卒業したときに得られる資格は、「特別支援学校高等部卒業」です。これは、知的障害の場合もそれ以外の場合もおなじです。

「特別支援学校高等部卒業」は、「中卒」ではありません。「高等学校卒業」いわゆる「高卒」ともちがいます。大学や専門学校への入学資格が得られるのは高卒とおなじですが、就職の際には高卒資格を持っている者として応募することができないのが一般的です。

余談となりますが、特別支援学校高等部を卒業後に、「高卒の資格を取ることはできないか」「もう一度高校に入学しなおしたい」という問い合わせは、実はかなりあります。特別支援学校に進学を決める際には、高等部卒業後の生活のことも考え様々な選択肢から慎重に進学先を選ぶべきであるといえます。

まとめ

今回は、特別支援学校高等部の教育課程(知的障害の場合とそれ以外の場合)について解説をしました。

知的障害の場合は、各教科の枠組みそのものが通常の高等学校と違っているため、高等学校と単位認定や評価の仕方が異なります

知的障害以外の場合は、各教科の枠組みそのものは通常の高等学校と同じであるため、準ずる教育課程(高等学校の各教科等と自立活動で編成された教育課程)を編成することができます。また、知的障害を併せ有する生徒に対しては、知的障害以外の特別支援学校であっても知的障害の場合と同様の教育課程を編成することができるということでした。

以上、最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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